心構えと基本知識


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食事療法の目的~カロリー制限だけでは不十分

糖尿病の治療は「血糖値を継続的に良好な状態に維持して、健常者と変わりない生活をおくれるようにする」ことと、「合併症の発症や悪化を防止する」ことを目的として、行われます。

(糖尿病の全体像については、姉妹サイト「糖尿病 3分で知る症状・治療・予防」 をご参照下さい。)


国内の患者数が潜在患者を含めると2,200万人超とも推定されるなか、食事療法は、運動療法とともに治療の中核に位置づけられてきました。

その目的は「代謝機能をできるだけ正常に近づけ、合併症の発症・進行を防ぐ」ことにあります。


ご存知のように、糖尿病は「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分かれており、日本人の9割以上を占めるのは、「2型糖尿病」です。

日本では全体の5%に満たない1型糖尿病では、まず第一に「血糖値のコントロール」に治療の主眼がおかれます。

注射によるインスリンの補充が主な治療になり、食事も発症前と比べて制限されることはほとんどありません。


それに対し、生活習慣の乱れや加齢がその発症に深く関わってくる2型糖尿病においては、エネルギーコントロールを中心とした体重管理(すなわちインスリン抵抗性の改善)と食事の栄養バランス改善を中心に据えた食事療法が展開されてきました。


このうち「摂取エネルギー量の調整による体重管理」というのは、なんとなくイメージしていただけると思いますが、見落としがちなのは2つ目の「食事の栄養バランス改善」です。

ちまたでは「食事の糖分さえ減らせば糖尿病はよくなる」との説もよく聞かれますが、「単なる摂取カロリーの総量制限」と「バランスを欠いた栄養摂取」は、明らかに異なるものです。


血糖値のコントロールからみた摂取量・回数・食事時間

糖尿病の食事療法においては、まず「1日の摂取エネルギー量」が設定されます。


これは個々の患者の生活実態にあわせ、以下の(1)~(3)の手順で算出した数値を目安に決められます。

ただし算出後の数値には、通常±100kcal程度の誤差は認められます。


(1)標準体重の計算(以下算式による)

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22


(2)(1)の標準体重×以下に該当する「身体活動量(kg)」

・デスクワークなどの軽作業者 25~30kcal/kg(標準体重)
・立ち仕事の多い作業 30~35kcal/kg(標準体重)
・力仕事の多い作業 35~kcal/kg(標準体重)

(3)生活実態や年齢・肥満度、身体活動量などに配慮した微調整を加える


カロリー(kcal)は、食物の摂取によって発生するエネルギーの単位です。

これを現在の1日あたりの摂取エネルギー量と照らしあわせて、全体の栄養バランスに配慮しながら調整していくことになります。

注意してほしいのは、糖尿病の食事療法は決して「単純な食事制限」とイコールでは無いということです。


たとえば一日3食を2食にするなどして食事の回数を減らすと、どうしても一日3食分の量を2回で摂ることになりがちです。

こうなると体内に入ってくる一回あたりの食事量も多くなり、食後血糖値が急上昇しやすくなると同時に、高血糖の状態も長く続くことになります。


食事療法を続けるための自分ルールと、家族の協力

糖尿病の食事においてまず意識したいのは、「食後血糖値のコントロール」です。

血糖値のコントロールからみた摂取量・回数・食事時間 で記したように、一日の食事回数と日々のそれぞれの食事における時間間隔ができるだけ一定範囲に収なるように調整することで、食後血糖値の上昇を抑えるための体内環境を整えていきます。


もちろん長い人生、いつもいつも同じ食事時間にとることは無理でしょうし、たとえば仕事の出張で外食や接待が続いたり、あるいは残業で食事時間が不規則になったりすることは、ある程度避けられないことです。

もっとも大前提として、不規則な食事時間や食事内容を少しでも改めることができるなら、それに越したことはありません。

しかしそれが難しい場合でも、それらを糖尿病の食事療法が続かない理由にするのではなく、「生活や食事のリズムの乱れが生じたときの対処法を、あらかじめどう準備しておくか」という視点から捉えたいものです。


ひとつの解決法は、「食事のための時間軸を広めにとる別ルールを、あらかじめ用意しておく」ことです。

たとえば、1日24時間で対応できない時の別ルールとして、「3日72時間」というセカンドルールを決めておくのはどうでしょう。

そもそも食べたものの栄養が人体に完全に吸収されるまでには72時間位はかかるそうですから、「3日間の幅で食事メニューや食事時間を考えておく」ことは、決して非合理な発想ではありません。


たとえば一日に1回あるいは2回しか食事がとれなさそうな時は、無理にその日の食事量を増やしたりせず、翌日の朝食を1品増やしてよいと自主ルールを決めるのはいかがでしょうか。

また逆に食べ過ぎた日の翌日は、食事回数と間隔をそのままにして食事量だけ1~2割減らす、といった自主ルールを、パターンとして用意しておくのです。

自分だけで決めていくことに不安がある場合は、管理栄養士と相談しながら検討するのもよいでしょう。


低血糖への対処法~食事から見る原因と対策

国内で現在の糖尿病患者の9割以上を占めるのが、生活習慣の乱れや加齢が発症に深く関わっている「2型糖尿病」ですが、残りの5%が、すい臓の細胞が破壊されインスリンの分泌が行われなくなる「1型糖尿病」の患者に分類されます。


1型糖尿病の原因解明はまだ途上ですが、肥満など生活習慣の乱れが関与していないことが特徴です。その治療法もインスリン注射による補充が主で、食事も発症前と比べほぼ制限されることがありません。


これまで1型糖尿病は小児~若年期に急激に発症することが多いと言われてきましたが、中高年になって突然発症するケースもあることが最近わかってきました。

さらに発症の段階で1型か2型か判別がつきにくいケースや、1型と診断されていながら2型を併発するケースなども見られます。

しがたって1型・2型の別にかかわらず、これまで一般にインスリン療法を行なっている患者の症状と考えられてきた「低血糖」について、発生原因や症状、そして食事を通じた対処のコツについて、ある程度知っておく必要があります。


低血糖は、血糖値がおおむね60mg/dl以下になった状態を指しますが、インスリン療法や血糖降下薬による治療を行なっている患者は、血糖値がもっと高くても低血糖の症状が出るケースがあります。


症状としてはだるさ・めまい・空腹感・脱力感といった初期症状からはじまり、動悸や冷や汗・手足の震えといった典型的な交感神経症状が現れます。

放置しておくと意識を失い昏睡に至ることになりますが、これらの症状は必ずしも順を追って現れるものではなく、個々人の血糖値の低下度合いによって異なる点には注意が必要です。


急に意識を失ってしまう方もいますし、逆に血糖値が相当下がっても低血糖の症状が現れにくい方もいます。

ちなみに高齢者の糖尿病患者の場合、低血糖による異常行動がしばしば認知症とも混同されることがあるそうです。


低血糖症が起きる原因としては、上で述べたインスリン療法によるもの、すなわちインスリンが増量されたときに起きることが確かに多いのですが、1型糖尿病の早期の患者の場合は、食事療法のみしかしていなくても、食事から数時間後に低血糖の症状を起こすこともあります。


食事に関連する低血糖の主な原因には、糖質の摂取量が少なかったり、食事時間が過度に遅れたり、あるいは空腹時に飲酒したことによりアルコールが肝臓からのブドウ糖放出が抑制された場合などがあげられています。


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