妊娠糖尿病の食事療法~血糖コントロールと栄養バランス


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妊娠中に発見された糖代謝異常は、「妊娠糖尿病」と呼ばれます。名前こそ似ていますが、この「妊娠糖尿病」は、正しくは糖尿病そのものではありません。


妊娠糖尿病は、「妊娠中に初めて発見・発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常」を指します。この定義どおり、明らかな糖尿病は妊娠糖尿病には含まれません。


もちろん妊娠前から妊婦が糖尿病であることもあり、この場合は「糖尿病合併妊娠」と呼ばれます。こちらは通常の糖尿病であり、糖尿病合併妊娠は妊娠糖尿病に比べて、胎児に奇形を生ずるリスク(巨大児など)が高まるとされています。

そして妊娠中に糖尿病と診断された場合も、それは通常の糖尿病であって、妊娠糖尿病とは呼ばれません。


ただし糖代謝異常にとどまっていれば問題が無いわけではなく、軽い糖代謝異常であっても周産期のリスクが高まったり、妊婦本人が糖尿病を発症するリスクが高まるため、いずれにせよ経過観察と治療が必要になります。


ちなみに平成22年から妊娠糖尿病の診断基準が変わったことにより、現在は比較的軽い状態であっても、妊娠糖尿病と診断される方が増えているようです。


糖尿病患者の妊娠については、母体の健全なコントロールによって胎児を守るため、厳格な出生前検査が必要になります。

75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)によって診断され、数値が一定の基準以上に達した場合に該当します。

ちなみに妊娠前の血糖コントロール値は、一般に「HbA1c7.0%未満」が妊娠が許容される目安になっています。


妊娠中は胎児と妊婦双方が栄養の必要量を満たすため(妊娠中は一日2,000キロカロリー程度の摂取は必要になります)、通常よりも食事量を多くする必要もでてきます。そうなると、どうしても太りやすくなります。

妊娠中は胎盤から出てくるホルモンの影響により、インスリンの働きが弱まるため(インスリン抵抗性の増加)、妊娠前に比べて高血糖を招きやすくなります。

また肥満があると妊娠中毒症などの産科異常も起こしやすいため、いずれにしても肥満を解消することが求められます。


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厳格な血糖コントロールが要求されるわけであり、従って体重管理、すなわちそのための食事療法が、極めて重要になります。


なぜなら妊娠中のために運動することも大きく制約を受けており、また妊娠前および出産後の授乳期までは、経口血糖降下薬の服用も禁止されています(血糖値が非常に高く、食事だけで血糖のコントロールが難しい場合は、インスリン療法によります)。

そのため基本的には、食事療法を中心に対応せざるを得ないのです。また食事療法は、妊婦の産科的合併症の予防のためにも重要になります。

妊娠初期の段階で血糖コントロールが不良になると、先天性異常や流産の確率が高まるとも言われます。


妊娠糖尿病の食事療法が難しいのは、妊婦本人のことを考えるのみならず、胎児の栄養素も必要十分となるよう栄養バランスをとっていくことが求められる点にあります。


ただし肥満しないようにと、妊娠中にやみくもにダイエットをはかるのも危険です。

空腹時の母体の血糖は胎児のエネルギー源として優先されますが、このとき母体は、体内の脂肪もエネルギー源として利用しています。

妊娠中に栄養バランスや血糖値に配慮しない無理なダイエットなどを行なうと、このときに過剰に生成されたケトン体が「糖尿病ケトアシドーシス」という深刻な合併症を誘発するリスクを高め、母体と胎児の双方にダメージを与える恐れがあります。

したがって「食事量+栄養バランス+血糖コントロール」の3点に注意しながら、かつ肥満を招かないように食事を摂っていくことがポイントになります。


ただしこのために一回の食時量を増やすと、食後の血糖値が上がってしまうため、一回の食事量を減らしながら食事の回数を5~6回に引き上げる、いわゆる「分割食」が推奨されています。


胎児への栄養バランスという点では、たんぱく質・ミネラル・ビタミン・カルシウム・鉄分といった主力栄養素に加え、葉酸を含んだ緑黄色野菜の積極的な摂取が求められます。


間食は、どうしても炭水化物や塩分の摂取量が増えてバランスが偏りがちになるため、控えめにしたいものです。

時おり間食をする場合には、菓子・ジュースなど加工食品類の間食を極力抑えると同時に、ナッツ類やカッテージチーズ・ヨーグルト・(海藻)サラダなど、比較的ローカロリーで血糖値を上げない食材、そしてできれば食物繊維の多いものを摂るようにします。


また妊娠中はつわりによって脱水症状を起こしたり、ストレスから極端に食事の量が減ることもあり得ます。

これらは当然に妊婦の血糖コントロールに悪影響を及ぼすので、医師および管理栄養士の指導のもと、食事療法をしっかりと守って適切な体重管理をすることが必要です。


次の記事は「食事を摂れない時の対策~糖尿病とシックデイ」です。

ひとつ前の記事は「低血糖への対処法~食事から見る原因と対策」です。


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