「カーボカウント」とは~糖質制限やダイエットと何が違うか


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主食(炭水化物)を上手に摂って、血糖値の上昇を抑えるでご説明したように、主食(炭水化物)は表1~6の6つの食品グループに分類された「食品交換表」の表1に属し、たんぱく質(表3と表4)や脂質(表5)を含めた糖尿病食事療法全体の「一部分」に位置づけられています。

食品交換表による計量に、どう向き合うか

しかしながら、糖質は消化吸収のスピードも早く、食後の血糖上昇にもっとも大きな影響を及ぼします。しかも糖尿病患者は健康な人に比べ、糖質の影響をより受けやすくなります。


ここに、特に食事中の炭水化物(糖質)に着目したアプローチを整えて、糖尿病の食事療法に活かす意義が認められます。これが「カーボカウント」で、「食品交換表」にもとづいた体系の中で、特に炭水化物(糖質)のコントロールに焦点をあてた方法になります。

カーボカウントの「カーボ」は、英語のcarbo(-hydrates)、すなわち「炭水化物」のことです。「炭水化物量≒糖質量」なので、「カーボカウント」はすなわち「糖質をカウントする(測る)」ことです。


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カーボカウントはいわゆる「糖質制限」ではありません。また「ダイエット」でもありません


行うのはあくまで炭水化物(糖質)量の「計算」にもとづいた、必要摂取量のコントロールであって、単純に糖質をカットしたり制限したりすることではありません

またカーボカウントの目的は「食事後の血糖値を安定させ、血糖コントロールを良好なものにすること」であって、体重減が主な目的となる「ダイエット」とも、明らかに異なります。

独りよがりの解釈を避けるためにも、日本糖尿病学会の編著による「カーボカウントの手引き」をお手もとに置き、時々参照しながら進めるのがよいでしょう。


カーボカウントには、「基礎カーボカウント」と「応用カーボカウント」があります。

「基礎カーボカウント」は、食品交換表にもとづく食事療法を行っているものの血糖コントロールが上手くいっていない方や、食事の時間が不規則だったり、一日3食の食事量の差が大きい方に適しています。

「応用カーボカウント」は1型糖尿病や、強化インスリン療法中の2型糖尿病の患者が主な対象になります。


「基礎カーボカウント」では、指示エネルギー量に応じた1日の糖質量を、3食+間食にバランス良く配分します。それぞれの食事から毎日同じ時間帯に、ほぼ同量の糖質を摂るトレーニングを行います。

1食あるいは個々の食品の糖質量を大まかに見積もれるようになるまでは、相当程度の練習が必要です。とりわけ外食時のセットメニューやコンビニ弁当等を食べる機会の多い方は、夜のアルコールや間食による糖質量も、忘れず計算に入れる必要があります。


慣れるまでは面倒がらず、食品の外装に記載された「栄養表示」を必ず見て、炭水化物(糖質)量をチェックするクセを身につけましょう。

ただし「栄養表示」は±2割程度の誤差が許容されており、あくまで大まかな参考値になります。最初のうちは「食品交換表」も併用して、ダブル・チェックするほうがよいでしょう。


「応用カーボカウント」では、食事中の糖質を処理するのに必要な「糖質用インスリン」と、その時点での血糖値を補正するための「補正用インスリン」を合計した、「追加インスリン」を注射する必要があります。

前者は「糖質/インスリン比」、後者は「インスリン効果値」という単位を使い、それぞれを計算して合計量を決めるのですが、もともとの血糖値の高さ以外にも様々な属人的要素を考えに入れて、補正していく必要があります。


たとえば、血糖値に最大の影響を与えるのは確かに糖質ですが、炭水化物(糖質)だけを気にするのは片手落ちで、たんぱく質・脂肪の摂取量も注意する必要があります。

たんぱく質や脂肪の多い食事を摂ると、食後数時間(たんぱく質は3~5時間後、脂質はそれ以上)経ってから血糖値が徐々に上昇していくため、糖質(炭水化物)量のコントロールだけで、常に血糖値を安定させられるわけではありません。


食事からの経過時間に加え、食事の時間帯や持病の有無・その日の本人の体調や日々の運動量なども加味しながら、追加インスリン量を計算して調整しなくてはなりません。

したがって応用カーボカウントは、主治医および管理栄養士の指導のもと行う必要があります。


いずれにせよカーボカウントは基礎・応用のいずれも、食品交換表にもとづく食事療法の実践と並行した、「理論の正しい理解」と「主体的な実践トレーニング」が必要です。


とくに基礎カーボカウントにおいては、細かい点に神経質にならず、自分の体質と生活状況に応じたやり方を、実際の練習を重ねて身体に覚え込ませるのが先決です。

最初はPCやノートに実施内容を記録し、管理栄養士等のチェックを受けながら進めるとよいでしょう。


次の記事は「たんぱく質(主菜)は、脂質の過剰摂取に注意」です。

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